フィクションかもノンフィクションかもしれない話。(9)

利用明細はすべて、六本木ヒルズの駐車場になっていた。

恐怖の中で慌てて、カード会社に電話をした。

対応はこうだった。

「まずお客様が、カードを利用されたことを警察に通報してください。そうされましたら、ご利用額は補償させていただきます」

要は、他人のカードを勝手に利用したわけだから、窃盗になるんだよな。警察に言うのは簡単だけど、人を犯罪者にするのは、なんだか考えてしまう。

とりあえず彼にことの真相を聞かなきゃ。

だが、電話にいっこうに出ない。

諦めて考えた。ふと、彼のヤミ金会社の上司の奥さんの話を思い出した。

あの話が嘘だとしても、病気の人や、もらえる年金も少なく、しかたなくヤミ金業者からお金を借りているお年寄り、いわゆる「弱者」の身代わりになっているとしたら……。

彼の大変さに少し同情してしまった。

結局、警察には通報せずに、代わりに貯金で支払うことにし、彼から少しずつでもかえしてもらうことに決めた。

それだけ彼を信じていたのだ。

でもそれが裏切られるとは。

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