利用明細はすべて、六本木ヒルズの駐車場になっていた。
恐怖の中で慌てて、カード会社に電話をした。
対応はこうだった。
「まずお客様が、カードを利用されたことを警察に通報してください。そうされましたら、ご利用額は補償させていただきます」
要は、他人のカードを勝手に利用したわけだから、窃盗になるんだよな。警察に言うのは簡単だけど、人を犯罪者にするのは、なんだか考えてしまう。
とりあえず彼にことの真相を聞かなきゃ。
だが、電話にいっこうに出ない。
諦めて考えた。ふと、彼のヤミ金会社の上司の奥さんの話を思い出した。
あの話が嘘だとしても、病気の人や、もらえる年金も少なく、しかたなくヤミ金業者からお金を借りているお年寄り、いわゆる「弱者」の身代わりになっているとしたら……。
彼の大変さに少し同情してしまった。
結局、警察には通報せずに、代わりに貯金で支払うことにし、彼から少しずつでもかえしてもらうことに決めた。
それだけ彼を信じていたのだ。
でもそれが裏切られるとは。
