フィクションかもノンフィクションかもしれない話。(7)

彼は五反田の事務所には帰ってこなかった。私は送迎の運転手に家まで送ってもらうことになった。

彼はどうしたんだろ。まあ、私が心配することじゃないね。そんなことを考えながら、やっと家に着くことが出来た。旦那は寝ていた。

次の日もその次の日も彼は会社に来なかった。

ある日の仕事の帰り道、彼は私をまるで見張っていたかのように、後ろから声をかけてきた。

あ、生きてたんだ。私はそんなのんきなことを考えた。彼に言われた通り、またあの走り屋の車に乗った。

なんだか、深刻そうな彼に不安を覚えた。彼は私に言った。

「お金貸してくれないかな」

は?お金?

「実はヤミ金の社長が消えたんだよ。給料も貰えなくなって。上司の奥さんが重病でお金が必要なんだ」

「……。いくらなんですか?」私は完全に信じていたみたいだ

「15万」

「返していただけるんですよね?他人にお金の貸し借りはしたことないので、あまり気が進まないのですが」

「必ず返す。今は、お世話にもなってるその奥さんを助けたいんだ。必ず返すから」

「ちょっと考えさせてください」旦那には言えない。そう思った。

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