フィクションかもノンフィクションかもしれない話。(5)

車中、彼は何やらインカムで事務所とやりとりをしているようだった。

「ごめん、恵比寿の事務所に戻る」彼はいきなり言ってきた。

えーーっ!何時だと思ってるの。もう11時だよ……朝帰りだ……私は夫に怒られるのを覚悟した。それにしても、「あの」部屋であった出来事を彼に話すべきだろうか。揉め事になっても怖いな。頭の中はそれでいっぱいで、彼からの手紙など忘れていた。

事務所に戻ったら、電話番の男性は暇そうにしていた。

「あみちゃん、お疲れ〜。どうだった??あの客ね、あまり顔見せたがらないよね」「疲れた〜、でもいい人だよ。優しい人だった」

そんな会話をしていた。彼はといえば、事務所に戻ったかと思ったら、また出掛けるという。あの事務所にはいたくなかったから一緒について行った。

今度はどこ行くんだろう……

着いたのは高級マンションのそばで、彼は慌てて車から降りて行った。しばらく経っても帰ってこない。なんだか不安になってきた。

そうこうしていると、女の子と一緒に彼が車に戻ってきた。女の子は泣いているようで、私は嫌な予感がしてたまらなかった。

事務所に戻り、女の子は例のソファのある部屋に行った。

彼と私は車に戻った。彼は話し始めた。

「彼女、お客に襲われたんだよ。いきなり部屋に入るなり、後ろから犯された。俺言ったんだよね『警察に行くか、ここで詫びるために彼女にお金を払うか』そうしたら、お金払うって。彼女に10万円払った。あの野郎」

私はゾッとした。これが風俗の現実の一部なのかもしれない。おそらく彼女が警察に行ったところで、警察は相手にしないだろう。

なぜなら『合意』の上にあるからだ。そういう危険もあることを承知の上で彼女たちは仕事をしなければならない。二人っきりの部屋で何があったとしても、何度も言うが『合意の上』なのだ。

その話以降、私たちに会話はなかった。

気づくと恵比寿とは雰囲気が変わり、どこかの会社のビルの前で車は止まった。

ラブホテルも目立つ。そこは五反田だった。

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