女の子を車から降ろし、恵比寿のマンションへ戻った。
「降りて」彼はそう言うと、マンションの中に入るよう私を促した。
私に恐怖心はなかった。とにかくマンションの中がどんな様子なのか気になった。
中に入るとやはり恵比寿のマンション。当時で言ういわゆるデザイナーズマンションでおしゃれな部屋。そこには数人の女の子に一人の男性。男性は電話応対に追われていた。
彼はまた送迎へ向かった。
「すみません。あみちゃん、あと5分ほどで着きます。はい、はい。申し訳ございません。よろしくお願いしますーー」「はい、〇〇でございます……」ひっきりなしに電話はなっていた。
女の子を見ると、マニキュアをしている女の子、鏡を見ながら巻き髪にヘアスプレーをしている女の子。可愛い小柄の女の子に、色黒の女の子。
あ、この子は可愛いから人気ありそうだな。う〜ん、彼女は男ウケしないんじゃない?と私はつい失礼ながら女の子の品定めを始めてしまった。
そんなこと考えながら突っ立っていると、電話番をしていた男性が私を別室に案内してくれた。
「ここで待っていてください」
あ、そうよね、あまり中を見せてはいけないのか。そう思いながらもソファしかない部屋でポツンと取り残された。なんだか私は、性風俗の裏側に潜入取材に来たみたいだ。でもそれってあり得るのだろうか。
そんなことを考えながら、私は天井を見上げた。監視カメラだ。
私は監視されている。
それに気づいた私はやっと、来てはいけないところに来たんじゃないかと思いはじめた。
部屋が急に暗くなった。あたりは真っ暗。人の気配だけがする。
何されるのか?私は変な度胸が座っていた。じっと様子を窺っていた。
急に押し倒された。私は何も言わず抵抗し、押し返した。
人は去っていき、あかりがついた。私はまた監視カメラを見た。
なるほど、モニターに映らないために暗くしたのか。いったい誰だったのか。彼は戻ってきたようだった。やれやれ、帰れる。そう思いデリバリーヘルスの事務所を出た。
ところが事務所の前のエレベーターの前で、いつもの彼は落ち着かなさそうにしていた。
??
突然、彼は私に小さく折り畳まれた紙を渡してきた。
私は紙を広げるとそこには「不躾ですが、付き合ってください」と書かれてあった。
は?私、既婚者ですが??
「ここの店は、五反田にもあるんだ」
彼は、話を変えてきた。
