フィクションかもノンフィクションかもしれない話。(2)

闇金融のやりとりを見たことがある。今でこそ「オレオレ詐欺」だが、私が働いていた当時、今から10年以上前だろうか、当時は「闇金融」という言葉が流行っていた。

見たというより、やり取りの現場に行った。

いきなりこれだけじゃ何が何だかわからないと思う。ちなみに私は普通の専業主婦。私は闇金融にお世話になるようなことはもちろんしていない。

じゃあなんで、闇金融の仲間が集まる現場へ行ったのか。私が働いていた仕事場にいた男は、ごくごく普通のメガネをかけたサラリーマン風の男性だった。私はその男性と話す機会があり、ある日その男性の車に乗らせてもらう機会があった。

男性は、どこだかわからない団地へ一緒に連れて行った。

「ここで待ってて」

男性は車を降りると、団地の中へ姿を消した。何があるんだろう。何が何だかわからない私はとにかく彼を待つしかなかった。

しばらくすると、男性は戻ってきていきなりこんな話をし出した。

「おばあさんにお金を貸しているんだ。今日はその回収日。ちくしょう、1万5千円しか返してもらえなかった」

「……。」回収?

男性は続けた。「1万5千円しか返してもらえなくても、結局お金がないからまたウチからお金を借りるんだ。お得意さんだよ。お金を返してもらえない時は俺が払う時もある」

「おばあちゃんだから、話し相手にもなってる」

「……。」闇金だ。私は思った。

夕方のことだった。それからあたりはすっかり暗くなっていた。

「これから、会社の仲間で会うことになっているんだけど、一緒に来てくれないかな」

「え?」私は興味津々だった。闇金業者の集会??

「ただし、後ろの座席に隠れてて。見られたら半殺しだよ」

「は?」半殺し?何が何だかわからなくなった。もう引き返すことはできない。私は、後ろの座席に移った。

「それだけじゃだめ。これ被って」男からジャンパーを渡された。

「本当に見られないようにして。そしてこっちも見ないで」

私は、半殺しなんかになりたくないから必死になって後部座席で丸くなっていた。

「これからどこへ行くんだろう……」そう思いながら、揺られていた。

車が止まった。私の感だがどうやら駐車場のようだ。なるほど、駐車場に集まって、違う車に乗り込み話し合いをするらしい。

私は、さらに体を硬直させた。声が聞こえてきたからだ。こんなところで死んでたまるか。と思いつつ、恐怖というより、興味の方が強かった。どんな男たちがいるんだろう。どんなことを話しているのだろう。何人くらい?

そんなことを考えながら、丸くなっていたら疲れてきた。このまま車から降りて行こうか。いやいや、私はいいが(よくない)男性もおそらく危害が加えられるに違いない。

ジャンパーは息苦しくなり、早く解放されたくなった。

その後の男性は無口だった。

まさか、会社の同僚が闇金融の一味であるとは、誰が想像できるだろうか。

疲れ切った私も無口だった。

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