先日私は素敵なあるご老人と出会った。玄関は昔ながらの引き戸。鍵はかかっておらず、開けっぱなし。がらがらと戸を開け「ごめんください」と、顔だけだし声を掛ければ、奥から「は〜い」と、女性の声が聞こえてきた。出迎えてくださったのは、奥様だろうか。とても可愛らしい(と言っては失礼だろうか)ご婦人があらわれた。
ここは、台東区の昔ながらの家屋が連なる、どこか懐かしい、下町だ。私たちは、奥様の「どうぞ」の声にうながされ、「先生」のもとへ通された。無造作に置かれた「都々逸」の投書に少し言葉をつまらせたが、「すみませんね。散らかってまして(笑)」と何度とおっしゃるご老人にすっかり安心しきっていた。
ご老人とは失礼だろうか。七七七五を定型詩とした「都々逸」を世に広めてらっしゃる素晴らしいお方なのだ。私はここ半年、「都々逸」や言葉遊びの歌会に月1通うようになった。私はまさかこのお方にお会い出来るとは思ってもいなかったので、緊張ぎみであったが、お会いしてみれば、とても気さくな笑顔の絶えない方だった。
奥様もとても愛らしく、お優しいご婦人で、お二人はとても素敵なご夫婦だった。
「また来てください」の言葉に、「そんなことおっしゃっていただけたら、また行きたくなりますよ」と思いつつ、下町を後にした。
私は、素敵なご夫婦に出会えたことで、なんだか幸福感に浸れた。幸せだな、私。
